盗んだ金で株やギャンブルに使ったらどうなる?

横領や窃盗のニュースで「盗んだ金を株やギャンブルに使っていた」という話、よく見ますよね。こういう場合、お金はどう扱われるのでしょうか?法律的な視点から整理してみます。

(関連記事)盗んだお金で借金返済は有効?損害は戻るのか?

刑事責任は当然残る

まず大前提として、盗んだお金を何に使ったかに関わらず横領罪・窃盗罪は成立します。
「株に投資した」「パチンコや競馬に使った」などの用途は関係なく、刑事責任は免れません。

会社や被害者にお金は戻るのか?

  • 株に使った場合:もし株が利益を生んでいたら、その利益を含めて返還請求の対象になります。ただし損を出していたら、お金は消えてなくなるだけです。
  • ギャンブルに使った場合:ほとんどは返ってきません。勝っていた場合の利益は返還対象ですが、負けたら完全に消えます。

つまり、被害者の会社からすると資産が残っていない限り損害は戻らないという厳しい現実があります。

利益が出ていた場合の返還先

では株やギャンブルで利益が出ていた場合、そのお金はどこに返還されるのでしょうか?

結論はシンプルで、被害者(盗まれた会社や個人)に返還する必要があります。盗んだお金から発生した利益も「被害者の財産」とみなされるためです。

  • 株で利益が出ていれば、元金+利益を含めて返還対象。
  • ギャンブルで勝った場合も、その勝ち分は返還対象。

つまり「犯人が運良く儲けたから助かった」という話ではなく、全部被害者に戻す義務があるんですね。

なぜ利益も返還しないといけないのか?

  • 不当利得のルール:民法703条では「法律上の原因なく利益を得た者は返還義務を負う」とされます。
  • 元金と利益は一体:盗んだ金がなければ利益は発生しなかったため、セットで被害者のものと考えられます。
  • 犯人を利さないため:元金だけ返して利益を自分のものにしたら「盗んだほうが得」になってしまうので、それを防ぐ意味があります。

だからこそ「元金+利益を含めて返還」が原則になるのです。

家族や知人に利益を渡した場合

では、もし犯人が株やギャンブルで得た利益を家族や知人に渡していたらどうなるのでしょうか?

  • 家族や知人が事情を知っていた(悪意)場合:不当利得として返還義務あり。被害者は直接その人に請求できます。
  • 事情を知らなかった(善意)場合:基本的には守られ、返還義務を負いません。被害者は犯人本人にしか請求できなくなります。

つまり、最終的に「知っていたかどうか」が分かれ目になります。悪意なら返還、善意ならそのまま有効、という整理です。

利益でモノを買った場合

もし犯人が株やギャンブルで得た利益を使って車や家電などを購入していたらどうでしょうか?

  • モノが残っている場合:そのモノは盗んだ金から生じたものとみなされ、被害者が差し押さえや返還請求をすることができます。
  • 第三者が事情を知って購入した場合:不当利得として返還を求められます。
  • 第三者が善意で購入した場合:取引の安全のために保護されるケースもあり、被害者は取り戻せず犯人にしか請求できません。

要するに、モノが残っている限り差し押さえ対象ですが、すでに善意の第三者に渡ってしまったら取り返すのは難しいということです。

仮差押え・資産凍結という手段

実務的に被害回復を図るには、スピード勝負になります。犯人が資産を処分してしまう前に、次のような手続きをとることが重要です。

  • 仮差押え:裁判前でも、裁判所に申し立てて犯人の預金・不動産・株口座などを一時的に凍結できます。
  • 刑事手続での差押え:刑事事件として捜査されている場合、証拠や犯罪収益として資産が差し押さえられることがあります。
  • 迅速な動き:犯人が浪費してしまうと回収不能になるため、発覚後すぐに法的措置をとるのが大切です。

「どうせ返ってこない」で終わらせず、仮差押えや資産凍結を使えるかどうかが、被害回復のカギになります。

実務的な結末

  • 横領した本人 → 刑事責任と損害賠償義務
  • 株やギャンブル → 利益が残れば返還対象、損失なら回収不能
  • 家族・知人・モノ → 事情を知っていれば返還対象、善意なら保護される
  • 被害会社 → 仮差押えや資産凍結に動ければ回収チャンスあり、出遅れると損害が残る

まとめ

盗んだ金で株やギャンブルをしても、罪が消えることはなく、しかもほとんどの場合お金は戻りません。
株で儲けていた場合や利益でモノを買った場合でも、その利益・資産はすべて被害者に返還すべきもの
ただし、家族や第三者が善意で受け取っていた場合は守られるケースもあり、会社にとっては厳しい現実が残ります。
だからこそ、発覚したら仮差押えや資産凍結でスピード対応することが、被害回復のカギになるのです。

注意書き

本記事は一般的な法的解説です。具体的な事案では結論が変わることがあります。実際の事件やトラブルは弁護士へご相談ください。

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