リチウムイオン電池の構造と発電原理をわかりやすく解説【劣化の見分け方と長持ちのコツ】

スマホやノートPC、モバイルバッテリー。私たちの生活を支えるリチウムイオン電池ですが、「中でどうやって電気が生まれているの?」と聞かれると、答えにくいですよね。この記事では、リチウムイオン電池の構造と発電の仕組みに加え、劣化の調べ方や長持ちさせるコツまでまとめました。

 

(関連記事)【注意】モバイルバッテリー火災が急増!リチウムイオン電池の発火原因とリチウムの科学的性質

 

リチウムイオン電池の基本構造

リチウムイオン電池原理

 

リチウムイオン電池は、大きく分けて4つの要素でできています。

  • 正極:リチウム金属酸化物(リチウムコバルト酸化物など)。充電時にリチウムイオンを放出する役割。
  • 負極:グラファイト(炭素)。リチウムイオンを出し入れする“貯蔵庫”の役割。
  • 電解液:有機溶媒にリチウム塩を溶かしたもの。イオンが移動するための通路。
  • セパレーター:薄いフィルムで、正極と負極が直接触れてショートしないようにする仕切り。

イメージで言えば、正極と負極は「駅」、電解液は「線路」、リチウムイオンは「電車」のような存在です。

発電の原理

リチウムイオン電池は化学反応によって電子を取り出す仕組みです。

  • 放電時(使うとき):負極からリチウムイオンが電解液を通って正極に移動。同時に電子が外部回路を流れ、スマホやPCを動かします。
  • 充電時:外部から電流を流すことで、リチウムイオンが正極から負極へ逆戻り。電気エネルギーを「貯金」している状態。

つまり、リチウムイオンが中で動き、電子が外の回路を流れる。これが電気を生み出す仕組みです。

充放電サイクルの流れ

  1. 充電:電源からエネルギーを受け取り、リチウムイオンが正極 → 負極へ移動。
  2. 放電:リチウムイオンが負極 → 正極へ戻る。同時に電子が外部回路を流れ、電気を供給。
  3. 再充電:再び正極から負極へ移動。これを繰り返す。

このサイクルを何百回も繰り返せるのが、リチウムイオン電池の強みです。

なぜリチウムイオン電池は小型・高性能なのか?

理由はリチウムの性質にあります。

  • 原子が小さい → イオンが動きやすく、高速で充放電できる。
  • 軽い → 金属の中で最も軽いので、同じ容量ならバッテリーを小型化できる。
  • 電位が低い → 大きな電圧を出せるので、少ないセルでも高出力が可能。

この特性により、スマホやノートPC、EVなど幅広く使われています。

リチウムイオン電池の劣化を調べる方法

リチウムイオン電池は使い続けると劣化して性能が落ちていきます。では、どうやって劣化をチェックできるのでしょうか?

  • 充電してもすぐ減る:新品時よりバッテリー持ちが明らかに短い場合、容量が低下しています。
  • 端末の設定で確認:スマホ(iPhoneなら「バッテリーの状態」、Androidも一部対応機種あり)で最大容量を確認可能。
  • 充電サイクル数:500回〜1000回ほど繰り返すと劣化が進むのが一般的。
  • 専用アプリやソフト:PCやスマホ向けに「バッテリー健康度」を数値化するツールがある。
  • 見た目の変化:膨張・変形・発熱がある場合は危険信号。すぐ使用を中止。

簡単に言えば、「持ちが悪くなった」「膨らんできた」と感じたら劣化が進んでいるサインです。モバイルバッテリーの場合も、容量低下や発熱があれば買い替えを検討しましょう。

上級者向け:内部抵抗を測って劣化を判断する方法

より正確にバッテリー劣化を知りたいなら、内部抵抗(インピーダンス)を測定する方法があります。内部抵抗は、電池内部で電流が流れる際の「抵抗値」で、劣化が進むほど高くなります。

  • 専用テスターを使用:YR1030やYR1035などのバッテリー内部抵抗計を使うと、mΩ(ミリオーム)単位で計測可能。
  • 良好なセル:新品の18650セルなら10〜30mΩ程度。
  • 劣化セル:100mΩ以上に上がっている場合、容量低下や発熱リスクが高い。
  • DIY測定:簡易的には、一定電流を流して電圧降下を測定し、オームの法則で計算。ただし安全知識必須。

内部抵抗は「隠れた劣化度合い」を数値化できるため、リユースや自作バッテリーパックを扱う人には欠かせない指標です。ただし短絡や過放電のリスクもあるため、初心者が安易に試すのは危険です。

リチウムイオン電池を長持ちさせるコツ

せっかくの高性能バッテリーも、使い方次第で寿命が大きく変わります。劣化を遅らせるコツをまとめます。

  • 充電しすぎない:100%まで充電し続けるより、20〜80%の範囲で使うと寿命が延びます。
  • ゼロまで使い切らない:0%まで放電するとダメージが大きい。20%くらいで充電開始が理想。
  • 高温を避ける:夏場の車内や直射日光はNG。劣化が急速に進みます。
  • 長期保管は半充電で:使わないときは40〜60%程度で涼しい場所に保管。
  • 急速充電の多用を避ける:便利ですが発熱が大きく、繰り返すと寿命を縮めます。

ちょっとした意識で、バッテリーは何倍も長持ちします。

まとめ

  • リチウムイオン電池は正極・負極・電解液・セパレーターで構成される。
  • リチウムイオンの移動が電池の充放電のカギ。
  • 小型・高性能なのはリチウムの性質によるもの。
  • 劣化のサインは「持ちの悪化・膨張・発熱」。端末設定やツールで確認できる。
  • 内部抵抗測定は上級者向け。精密な劣化チェックが可能。
  • 長持ちのコツは「充電しすぎない・ゼロにしない・高温を避ける」。

身近にありすぎて意識しないリチウムイオン電池。構造や仕組みを知り、正しい使い方をすれば、安全に長く付き合えますよ。

------------<広告>------------